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「ミシェル・ルグランと漆戸啓」
――アルバム制作で、特に苦労された曲などはありますか?
漆戸 どの曲もそれなりに難しかったけど、一番気を使ったのは、やっぱり「L'ete42」かな。ミシェル・ルグランのオリジナルが、アレンジも含めて、ひとつの作品として完全に出来あがっているので、あまりいじりたくなかったんです。そこで、オリジナルの演奏を聴きながら音を拾っていったんですが、すごく勉強になりました(笑)。「ピアノだけで、これだけのことができるんだ」というのを見せつけられた気がして。彼の曲って、ピアノのアルペジオが、ちゃんとメロディになっているんですよ! それに気づいた時は、ゾクッとしました。

30th Aniversary Concert03 恋ほど素敵なショーはない
六本木スイートベイジル139 (2009.11.5)
良美 私は、漆戸さんって、ミシェル・ルグランと似たところがあると思うの。二人ともすごく素敵な曲を作るし、ピアニストでありながら自分でも歌っているし。目指せ、ミシェル・ルグラン!(笑)
漆戸 言いすぎだよ!(笑)
良美 ピアノの音色が繊細なところも似てるよね。漆戸さんのピアノの音には、陰影があるんです。私はいつも、メリハリをつけるために「詞の中のどの言葉を立てるか」「聴いている人に、どの部分を一番伝えたいか」を考えながら歌っているんだけど、漆戸さんは、指先のタッチだけで陰影が表現できる。それはすごいことだし、天才的だと思うの。そんな漆戸さんのピアノの陰影と、私の歌の陰影がぴったり一致した時なんて、鳥肌が立ちますね。
漆戸 そう言ってもらえると、嬉しいですね。さっき「ヴォーカルアルバムに憧れてた」って言ったけど、僕はピアニストよりも、伴奏者でありたいんです。クラシックの世界では、いい伴奏者って余計なことをしないし、歌が引き立つような演奏をするんですよね。同じように僕も、ヴォーカルをより生かせるようなピアノが弾きたい。だから逆に、ライヴなんかの時に「ここは、ピアノソロで」と言われると、困っちゃうんです(笑)。
『七色音色ツアー』前半戦を終えて
――『七色音色ツアー』の新潟3本と北海道の前半5本が終了しましたが、一緒にコンサートツアーをやってみて、改めて気づいたことなどはありますか?
漆戸 今までは(古賀)いずみちゃんと二人だったので、いずみちゃんのソロ、僕のソロ、いずみちゃんと僕のハーモニー、の3つしかパターンがなかったけど、良美さんが加わることで、7通りのパターンができる。僕にとっては、すごくハーモニーの勉強になりました。
良美 二人は器用だから、すぐにハモれていいけど、私は不器用で、なかなか対応できないの(笑)。
漆戸 でも、良美さんはいい意味で我が道を行っていて(笑)、僕らも合わせやすいんですよ。だから、コンサートの二日目以降はいつも、前日の録音分を聴いて良美さんの声の状態を確認し、自分たちのパートを調整しています。これも、良美さんにブレがないから可能なんですよね。
良美 ただ不器用なだけです(笑)。
漆戸 いや、すごいことだと思うよ。自分をきちんと持ちつつ、一方で新しいことを取り入れていく柔軟性もあるし。それから良美さんは、リハーサルでも本番と同じように衣装を着るし、決して手を抜かない。そういうところも偉いなあ、と思っています。
良美 私は手を抜いた歌い方ができないんです。口ずさんだり、カラオケで歌ったりする時も、毎回本気なの(笑)。
漆戸 でも、ピアノも同じだけど、時間をかけてダラダラと練習するより、本番と同じように集中してやった方が、効率がいいんだよね。一度手を抜くことに慣れると、手を抜いた音楽しかできなくなるし。
良美 あと、リハーサルって、音響さんや照明さんのためのものでもあるでしょ? だから、できるだけ本番に近い状態でやっておきたいんです。そもそも私、何でも決めたとおりにピシッとやりたいんですよね(笑)。演奏やトークの内容を決めこまず、その日の気分によって変更するアーティストの方もいるんだけど、私にはそういうやり方は合わなくて。
漆戸 僕も(笑)。アドリブが苦手なので、ピアノを弾く時は、いつも事前にフレーズをかっちり決めてます。でも、同じフレーズを弾いていても、毎回、全然違うんだよね。
良美 そう! ミュージカル『アニー』をやっていて気づいたんだけど、全く同じ内容を何度もやるからこそ成長できることってあるよね。曲目やセリフは同じでも、目に見えない中身の部分が変わっていくというか。そういう意味で、『アニー』や『七色音色ツアー』は、同じ内容を何度もやらせていただける最高のチャンスなんだけど、まだまだ歌いこなせていない曲がたくさんある気がします。
――それでは最後に……。来年の1月から2月にかけて、『七色音色ツアー』の北海道後半6本と関東VERSIONの横須賀と中野サンプラザがありますが、これからご覧になるみなさんに、メッセージをお願いします。
漆戸 他のアーティストの方と、こんなにも密なコラボレーションをさせていただく機会は、なかなかないと思います。僕自身、誰かと一緒に音楽をやる楽しさや緊張感を再確認しているんですが、是非みなさんも会場に足を運んで、コラボレーションの面白さを感じてみてください。
良美 『七色音色』は今しか味わえない旬のものなので、絶対に見逃さないでください! あと、私としては、完成されているカズンを、いい意味でちょっぴり壊しちゃいたいな、と思っています(笑)。せっかく一緒に音楽をやれるんだから、お互いに、どんどん新たな発見をしていきたいですね。









