| 岩崎良美 午後のおしゃべり 「みそっかすの冒険」 |
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前書き この物語の主人公は、心優しく努力家で好奇心旺盛な一匹のオスの亀です。 といってもこれは、人間である私がそう考えているだけなのです。 例えば、とても意地悪でぐうたらで、冒険なんて大嫌いな亀なのかもしれません。 そうです、これから長い長い旅に出ることを、もちろんこの亀は知りません。 亀の世界では、人間のように親が名前を付けるなんて事は出来ません。 どんなにお父さんとそっくりでも、父親の名前から一文字もらった亀なんて、 世界中に一匹もいないのです。卵のからを割って初めて新しい世界に誕生 した時から、親の顔も知らないまま、命をかけた冒険をしているのです。 |
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第一話 誕生そして旅立ち その子はまだ、砂の中でした。正確には、まだ殻の中で新しい世界との出会いの 時を待っていました。兄弟達が殻をコンコンと割っていく音を聞きながら、その子は 居眠りをしていたのかもしれません。もう陽が沈み始めた頃、やっと殻を割ってその子が 出てきたとき、砂の上に出来た西や東・南や北へのたくさんの足跡はあったものの、 兄弟達の姿は見あたりませんでした。 「僕はどこへ行くのだろう?」そう思ったに違いありません。 その時その子の目に、赤く輝くものが映りました。 私は、この物語の主人公であるその子に名前を付けました。 最後に生まれて、兄弟の顔も、自分の向かっていく場所も解らないその亀の男の子の 名前は「みそっかす」 「みそっかす」は、どこへと向かうのでしょうか? 赤く光るもの目指して歩き出したみそっかすは、やがて森にたどり着きました。 もう夕暮れ時、初めて見る森の木々は、みそっかすの目にはとても不気味に映りました。 そのうえ、誰かいるようです。木陰からカサカサと、それは怖くてふるえているようでした。 「誰がいるのかなぁ・・・」みそっかすは、勇気を振り絞って木陰の方に歩き出しました。 みそっかすはまだ生まれたばかりのあかちゃん亀です。 ピンク色のふわふわとした毛のところまでたどり着くと、ぐっすり眠ってしまいました。 ふるえながら眠っていたのは、ピンクのうさぎ。怖い夢を見ていたようです。 でも、あら不思議!目が覚めるとすっきり元気です。怖い夢のこともすっかり忘れています。 「ありがとう!ちびのカメ君」 ピンクのうさぎは、もっと森の奥へかけていきました。 さあみなさん、おわかりですか? みそっかすは、不思議な力を持っているのです。 添い寝すると、怖い夢をすっかり食べてしまいました。 ほんのり甲羅をピンク色にそめたみそっかすは、朝が来るとまた、歩き出しました。 今度は、どんな不思議な力を見せてくれるのでしょうか? |
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第二話 不思議な力の旅 どこまでも続く広い大地を、みそっかすはウトウトしながら歩いていたのかもしれません。 それとも、ゆっくりと一つ、まばたきをしていたのでしょうか? 目の前にある大きな穴に、まったく気づきません。 「あっ、落ちるよ!」 私は思いっきり大きな声で叫んだのですが、物語の中のみそっかすに届くはずがありません。 「うわ〜あっっっっっ」 やっぱり・・・転がり落ちてしまいます。そのうえ、コツンと音がしました。 運悪く穴の底には、堅いものがあったようです。 その堅いものにぶつかったみそっかすは、気を失って・・・・・・ いえいえ、寝息を立てています。眠ってしまいました。 どのぐらい時間が過ぎたでしょうか? ドン、ドン、ドンドンドンドンドンドン・・・・・・・・・ 地響きとともに近づいてくる大きな音で、みそっかすは目を覚ましました。 その大きな音の主は、おかあさんダチョウです。 「私の赤ちゃんはどこにいるの!」 どうやら、卵を産んだ場所を忘れてしまったようです。 もうみなさんおわかりですね。 みそっかすが落ちて、コツンとぶつかったのは、おかあさんダチョウの生んだ たまごだったのです。実はその時、たまごはちょっぴり冷たくなっていました。 でも大丈夫。 みそっかすの不思議な力で、ダチョウの赤ちゃんはもうすぐ生まれるところです。 その瞬間に、おかあさんダチョウもまにあいました。 「ありがとう!ちびのカメ君」 おかあさんダチョウは、みそっかすに大切な羽をプレゼントしました。 だからダチョウは、もう二度と空を飛べなくなってしまったのです。 どんなおかあさんでも、自分の赤ちゃんのためならば、 一番大切なものをプレゼントできるのです。 「僕のおかあさんはどこにいるのかなぁ?」 ちょっぴりおかあさんのことを考えたみそっかすは、また、旅立ちました。 さて、どこへと向かいましょうか? おかあさんダチョウからもらった羽は、小さなみそっかすにとっては、あまりにも大きなものでした。 上手に頭に巻くこともできないし、甲羅にしまうこともできません。 どうにか頭につけることができると、みそっかすはもと来た道を引き返し始めました。 「僕が生まれたところに、おかあさんがいるかもしれない・・・」 何度もくちずさみながら歩いていきます。 でも、大丈夫でしょうか? ここに来るまでに、みそっかすは2回も眠ってしまっているのです。 いいえ、きっと大丈夫! どんなおかあさんでも、自分の赤ちゃんが大切なように、 どんな赤ちゃんだって、自分のおかあさんが大切なのです。 |
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あとがき みそっかすの好物は何でしょうか? エスプレッソを飲んだり、フレンチトースト好きのカメ君だっていたりして・・・。 なんて、私はいろいろ想像をしてしまいました。 でも、さっきからみそっかすは、星空を見つめたきり動きません。 おなかは空いているはずなのに、 お母さんがなかなか見つからなくて、泣いているのでしょうか? いいえ、よーく見てみると、みそっかすがじっと見つめている星は、きらきら輝きながら落ちてきます。 そうです。みそっかすの好物は星のかけら。 じっと見つめるだけで、空から落ちてくるのです。さあ、どんな味がするのでしょうか? 星をいくつかほおばると、あら不思議!みそっかすは少しだけ背が伸びます。 もう立派なお兄ちゃんです。 大きくなった体にダチョウの羽を、そっと巻き付け、又旅に出るのです。 みなさんが流れ星を見かけたとき、もしかしたらみそっかすがそばにいるかもしれませんよ。 おしまい |